有機質発酵肥料の”高級粒状”:発酵をちょうどよい状態に留めておく

有機質発酵肥料の”高級粒状”の発酵を止めて乾燥させている様子です。

先週行われた講習会にて仕込み作業のデモンストレーションを行った高級粒状ですが、木曜日の仕込みから順調に発酵熱が上がり、土、日、月曜日の3度の切り返し作業を経て堆積発酵期間が終わりました。すぐに使用する場合はこれで完成なのですが、保存するためには薄く広げて乾かし発酵を止めます。速やかに発酵を止めるということも良質な発酵肥料を作る上では大事な工程です。

有機質肥料にタンパク質の状態で含まれるチッソ分はそのままでは分子量が大きすぎて植物は吸収出来ません。土壌中の微生物が作用し発酵分解されることではじめて植物が吸収することが出来るようになります。
そのため微生物の発酵分解作用が遅いと狙った肥効が得られにくかったり、逆に一気に発酵分解が進むと酸欠やガス害を引き起こし作物にダメージを与えてしまうことにもなり兼ねません。

予め有機質肥料を発酵させてアミノ酸にまで分解することで、このようなリスクを無くし、植物がスムーズに吸収出来る肥料になります。
その際に重要なのは発酵をアミノ酸の状態で留めておくということです。

チッソは植物体内で硝酸態、アンモニア態を経てアミノ酸となり更にそれが連なったものがタンパク質となりますが、その同化の過程において糖が消費されてしまいます。即ち植物が光合成で得た糖の消費を抑え、よりスムーズに成長するためにはチッソを硝酸態よりアンモニア態、アンモニア態よりアミノ酸の状態で吸収したほうがより効率が良いということになります。

更にアミノ酸態で吸収することで本来チッソ同化に使う分の糖がそのまま他に回せますので、単純に植物体内の含糖量が増え、細胞壁や葉の表面のワックス層など組織の強化による病害虫耐性の向上であったり、もちろん食味の向上も期待出来ます。

このように有機質肥料のメリットを活かすための発酵肥料作りであり、発酵分解を”ちょうどよい”状態に留めておくというのが重要となります。

3度の切り返し作業を経た高級粒状は材料である魚カスや油かすのタンパク質がアミノ酸まで分解された”ちょうどよい”状態にあり、そこで発酵をストップさせなくてはいけません。そのまま堆積しておくと発酵分解が進み過ぎて、アミノ酸がアンモニア、さらには硝酸にまで分解されてしまいます。
その違いは匂いでも分かります。芳醇なアミノ酸の匂いの中にアンモニア臭が混じってくると発酵が進みすぎている証拠で、そうなると肥料としての価値は大きく下がってしまいます。

肥料を広げて乾かす際には小さな山脈型にすることで平らに広げるよりも表面積を増やし、乾きが早くなります。
適宜天地返しを行ってしっかりし乾燥させてから米袋などに詰めて保存します。保存可能期間は1年程度を目安にします。

池見